元旦会
- 浄光寺
- 1月31日
- 読了時間: 4分
能登半島地震から一年が経ちましたが、現段階で自治体による全壊家屋の解体撤去は全体のたった25%しか進んでいません。学校などに置かれた避難所にいまだに300人以上が生活しています。災害関連死も直接死の228人を超え255人と月日と共に増えています。災害が起きる度に国からの支援の遅れが指摘されますが、一刻も早い支援を願うばかりです。
2024年の漢字は「金」が選ばれましたが、その理由には光と影がありました。「キン」と読む光の側面はパリ五輪・パラリンピックや大谷選手の活躍、「かね」と読む影の側面は政治と金・裏金問題・止まらない物価高騰・金目当ての闇バイト等です。特に政治と金の問題では国民の怒りが爆発し政権が大きく揺らいだはずですが、当事者には心底反省する様子は見られません。大企業が政権党に巨額の献金をし、政権は経済界の求めるとおりの政治をし、大企業はもうけをどんどんため込んで膨れ上がるばかりで、国民の暮らしはよくなる見通しが立ちません。今年の予算案が先日示されましたが、石破政権は軍事費として初めて8兆円を超える額を計上しました。これは教育予算の倍の額です。日本の平和国家としての存在意義を踏みにじろうとする勢力が、まだ政治の力に大きな影響力を持っています。
そのような流れに力強く釘を刺すニュースが日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞したというものでした。しかし実は10月に受賞する1ヶ月前の9月にそのことを予告するようなドラマがありました。連続テレビドラマ「虎に翼」です。戦後初の女性弁護士で裁判官にもなった三淵嘉子さんをモデルとして作られたドラマです。その後半に「原爆裁判」と呼ばれる裁判の様子が描かれます。この裁判は原爆の被害に遭われた5名の方が国の賠償を求めて起こした裁判です。戦後10年間は国民が戦争によって受けた被害については何の保証もなされませんでした。この裁判でもやはり国が勝訴するのですが、その判決文は初めて原爆が「その破壊力から、無差別爆撃であることは明白であり、当時の国際法から見て、違法な戦闘行為である。」と言い切ります。そして、「国家は、自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだ」「原爆被害の甚大なことは、一般災害の比ではない。十分な救済策をとるのは国の責任だ。そのために政治が存在しているはずだ。終戦後十数年を経て、高度の経済成長を遂げた我が国において、国家財政上、これが不可能であるとは到底考えられない。我々は政治の貧困を嘆かずにはおられない」と続きます。この判決がその後の戦後補償に大きく道筋をつけました。
このドラマの1ヶ月後にノーベル平和賞受賞のニュースが入ったので、大変驚きました。被爆体験を持つ方々が身をもって核兵器の非人道性を世界に訴え続けてきたことが「二度と核兵器を使用してはならない」という「核使用のタブー」を確立してきましたし、「核兵器禁止条約」という大きな流れに繋がってきています。しかし、日本政府はこの条約に参加しようともせず、アメリカの核で脅しをかけることで平和が保たれるという核抑止論という立場を変えようとしません。私たち日本国民一人一人が世界平和に向けて日本がどのような立場に立つべきなのか、考えなくてはならないと思います。
さて、自分の足下を見てこの一年自分自身に少しでも成長があったか、お念仏の生活が出来たか、と問うてみますと、ただただお恥ずかしい一年でした。子ども達の笑顔に何度助けられたかわかりませんが、家庭の中でもつまらないことでいさかい、自分で自分の心に地獄を作ることの多い日々でした。ただ、そういう自分を客観的に見る視点をいただけることが、お聴聞をさせていただいていることのかすかな救いです。親鸞聖人というお方は、人間というものが持っている愚かさを見つめるときには、常にそのど真ん中にご自分を据えておられました。お聴聞しながら、人間一般の話ではなく愚かなこの自分をまっすぐに見ることができれば、そこに初めて自分自身が成長する可能性が生まれます。自分に変えることができるのは、自分だけです。そこをきちんと乗り越えていくためには、自分の人格をしっかり育てていく必要があります。そのために仏法をしっかり学ばせていただきましょう。
昨年に引き続き、今年も皆さんで浄光寺の活動を支えていただきながら、楽しくご一緒に聞法を重ねていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

コメント