top of page
執筆者の写真浄光寺

元旦会

 私たちを取り巻く社会の有り様を改めて見てみますと、政治の劣化としか言いようのないひどい状況がますます社会全体に暗い影を落としています。昨年の安倍元首相の事件をきっかけに統一教会というカルト教団の組織票を手に入れるために政治がどれだけ歪められてきたのかが明らかになってきました。また、3.11の事故以来出来る限り原発への依存度を減らそう、という国の方針を先日岸田首相はあっさりと覆して新しい原発の建設や老朽化した原発の運転も認める方向に大転換しました。その裏では日立、三菱などの原子炉メーカーをはじめ原発建設に使われる鉄鋼メーカー、ゼネコン、核燃料の調達をする大手商社などから、政府自民党に1年間で6億3800万もの献金があったそうです。今もなお故郷に帰ることのできない福島の人々はこのニュースをどんな思いで聞いているのだろうと思うと胸が痛みます。

 そして、私が今一番不安に感じているのは、中国や台湾や北朝鮮のことではなく、その事による不安を煽って「だから軍備を増強するんだ」という政府の方針です。これだけ物価が高騰し私たちの生活が圧迫されているにもかかわらず、増税してまで軍事費を倍増するという方針を打ち出しました。私たちの国は、国際平和のために戦争と武力行使を永久に放棄し、戦力も持たないと決意した、世界に誇るべき憲法を持つ国です。それは全ての国際問題を外交努力で解決するということです。それが、岸田政権はこれまでは考えられなかったような、敵の基地を先制攻撃する能力まで認められるのだ、ということまで言い出しています。私は私の払った税金で買ったミサイルや弾薬が、遠い国の幼い子どもを傷つけることを絶対に認めたくありません。いったん戦争が始まるとどのような現実が待っているか、それはウクライナが教えてくれています。ウクライナでは続くロシアの

攻撃で停電が続き暖房も水道もままならない生活の中で家族がバラバラになり真冬の厳しい寒さの中で多くの人々が凍えています。

 2022年最後の「徹子の部屋」という番組にタモリさんが出演しました。黒柳徹子さんから「来年はどんな年になりますかね?」と尋ねられると、少し考え込んだ様子で、苦笑いも浮かべながら、「新しい戦前になるんじゃないですかね。」と答えられました。終戦の一週間後に生まれたタモリさんが、今の日本社会に戦前を感じているということはそれなりの洞察力ではないかなと思います。私たちの子や孫にどんな日本を残すのか、私たち一人ひとりの大きな責任が問われます。

 さて、視点を自分の足下に向けてこの一年自分自身に少しでも成長があったか、お念仏の生活が出来たか、と問うてみますと、ただただお恥ずかしい一年で心に地獄を作ることの多い日々でした。ただ、そういう自分を客観的に見る視点をいただけることが、お聴聞をさせていただいていることのかすかな救いです。親鸞聖人というお方は、人間というものが持っている愚かさを見つめるときには、常にそのど真ん中にご自分を据えておられました。いくら他人のアラがよく見えても、そのことを親切で教えてあげても、その人が成長したり、関係性がよくなったりはしません。それは同じ事を自分が言われた場合を考えればすぐにわかります。「あんたに言われたくないわ」と素直に聞くことなどできません。お聴聞しながら、人のことはどうでもいい。愚かなのはこの自分だ、と自分自身をまっすぐに見ることができれば、そこに初めて自分自身が成長する可能性が生まれます。自分に変えることができるのは、自分だけです。自分に厳しい目を向けるというのは、楽しい作業ではありません。どちらかというとしんどい作業です。そんなことには目を向けずに、あいつが悪い、自分はこんなにしてやっているのに、と他者を責め、自分が被害者になっている方が楽なのかもしれません。しかし、そこをきちんと乗り越えていくためには、自分の人格をしっかり育てていく必要があるのです。そのために、仏法をしっかり学ばせていただきましょう。



閲覧数:25回0件のコメント

最新記事

すべて表示

11月お便り

Comments


P55-16.jpg
bottom of page